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タービン故障の多くはオイル管理が行き届かず油膜切れに陥ったり、エンジン側の不具合に起因した故障です。
お車の点検を十分に行い原因追及・改善してから交換を行ってください。
改善されないまま交換しても症状が変わらないか、タービンが再度壊れてしまうことがあります。
当書で紹介しているのはタービン故障の代表例です。お車によっては紹介している箇所以外に点検・整備が必要です。
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■オイル供給不良 |
エンジンからのオイル供給が不足するなど、一時的な油膜切れを起こすと超高速で回るシャフトは摩擦熱によりベアリングと焼き付いてしまいます。シャフトがテンパーカラーと言われる紫色に熱変色するのが特徴です。
場合によってはシャフトの折損に至り鉄粉がオイルに混入するなど、金属片がエンジン内部に混入する恐れがあります。
特にこの様な現象が見られる場合はエンジンの十分な点検整備が必要です。
●熱変色したシャフト(右写真→) |
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★油膜切れを起こす原因例 |
(1)オイル・インレットパイプユニオンボルト内の堆積したスラッジがオイル供給を阻害している
(2)スラッジが流れ込みタービン内部のオイル通路を詰まらせてしまった
(3)タービンにオイルが充分に行き渡らないで状態で高回転で回した
(4)エンジンの油量不足
(5)オイルポンプ不良による油圧低下や脈動
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●スラッジが付着しているユニオンボルト |
●スラッジが堆積したインレットパイプ |
●オイル供給不良によるオイルの炭化 |
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■異物飛び込み |
インテーク/エキゾーストハウジングに異物が飛び込むとインペラやタービンホイールに損傷を受けます。そのまま運転を続けるとタービンシャフトがアンバランスになりベアリングの損傷、シャフト折損に至ります。
特に取り外したタービンのインペラを締め付けているナットが付いているか、必ず確認して下さい。
無い場合は吸入ラインに残留していて、交換後にエンジンやタービンに吸い込んで破損の原因になりますので必ず異物を取り除いて下さい。
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●損傷を受けたインペラ |
●損傷を受けたタービンホイール |
★吸入側への異物飛び込みの原因例
【1】初めに故障したタービンのインペラ締付ナットや破損したインペラの金属片がエアークリーナー、吸入パイプに残留していて吸い込まれる
【2】ウエス等を詰めたまま取り付けたりタービンの交換時に異物が入った。
【3】エアークリーナーが破損している
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●異物(締付けナット)を吸い込んだ
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★廃棄側への異物飛び込みの原因例
【1】エンジンの破損物(バルブ・リング等の破片、ピストンが溶けてアルミが流入)
【2】交換時にエキゾーストマニホールド内に異物が入ってしまい、そのまま取り付けた |
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●溶けたアルミが内部に付着 |
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■オイル汚れ、異物の混入
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オイルが劣化し炭化したカス(スラッジ)やゴミ、破損による鉄粉などが混入すると、シャフト及びベアリング表面にかじり傷や線状痕が残ります。
オイルパンの清掃やオイルパイプ、ユニオンボルト、オイルエレメントの交換、エンジン点検整備が必要です。
フラッシングを行う場合は交換前に完了して下さい。交換後にフラッシングはスラッジがタービン内に流入する恐れがあります。
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●異物による線状痕 |
●かじり傷がついたシャフト |
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●異物による線状痕のついた
ベアリング
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●異物による線状痕のついた
スラストベアリング
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★オイル内に異物が混入する原因例
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(1)タービン交換時、オイル交換時にゴミが混入
(2)オイルラインの残留スラッシが流入
(3)エンジンの故障による断片、金属片が混入
(4)オイルエレメントの劣化、損傷、詰まり
(5)オイルエレメントのバイパスバルブび作動不良
(6)メンテナンス不良などによる劣化したオイルが炭化
(7)フラッシングによりスラッジが流入
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●スラッジで詰まった
スラストベアリングのオイル穴
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●スラッジが大量に堆積
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■白煙、オイル漏れ |
タービンを交換してもマフラーから白煙、オイルが止まらないときは? |
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交換前のタービンから漏れたオイルがマフラー等に残っていてくすぶっている |
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しばらく経つと排気熱で蒸発し白煙が止まります |
A |
エアークリーナーの詰まり等でエンジンの吸気抵抗が異常に高くなると、タービンの吸入側からオイルが吸い出される |
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エアークリーナーの交換や吸気ラインの点検をして下さい |
B |
ブローバイ圧が高い。タービンへのベアリングハウジング内部は負圧を保つことにより、オイルが外部に漏れないようになっていますが、エンジンのピストンリング等が摩耗してクランクケースに燃焼ガスが漏れ出すなどのブローバイガスが過多・放出不良になるとクランクケース内部の圧力が上がってしまい、影響でタービンの内圧があがりオイルがオイルパンに戻りにくくなりタービンが正常でもオイル漏れを起こす |
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ブローバイ圧の簡易点検
次の症状がある場合はブローバイ圧が高い可能性があります。
●オイルの注油口、レベルゲージ、ブローバイホースを外すと白煙が止まる
●アイドリング時、注油口を外した状態で注油口から外気を吸入しない |
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■出力不足、加速不良 |
ターボチャージャーのインペラやタービンホイールの羽根に異常が無くハウジングに干渉することなくスムーズに回転するようであればタービン本体は正常と思われます。この様な状態で過給圧が上がらない場合は次のことが考えられます。
(1) アクチュエーター圧力調整不良、作動不良
(2) ハウジングのクラックやスイングバルブが固着等で排気ガスが逃げてしまいブーストがあがらない
(3) ガスケット抜け等、圧縮空気が漏れている
(4) エンジン不調 |
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■異音、笛吹き音 |
タービンは特有の周波数の高い音を発します。タービンの種類外同じでも個々に音程や大きさが異なります。タービンの異常による音かどうかを聞き分ける必要があります。異常がある場合の音とは・・・
(1) 空気及び排気ガスの配管の継ぎ目部分やガスケット抜けなどからの漏れによるビビリ音、笛吹音
(2) 羽根とハウジングの干渉音
(3) 羽根の曲がりや欠けによる風切り音
(4) ボールベアリングにゴミが混入したり、キズが付いているときの回転音 |
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■回転不良、ロック |
タービンは油膜切れ等で焼付きや回転不良を起こしますが、それ以外にも下記の原因などによって不具合を起こします。
(1)オイル漏れのまま運転を継続すると排気熱によりオイルが炭化し、タービンホイール周辺に付着堆積して干渉している
(2)何らかの原因でタービンの吸入側からオイルが漏れ出しインペラ周辺に付着堆積して干渉している
(3)エンジン側から何らかの破片がタービンホイールとハウジング又はシュラウドの間に挟まりロックする |
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